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腎性貧血について
エリスロポエチンの投与時期についてのアンケートで
出てくる獣医さん(仮名 A獣医師)に教えていただいたいくつかの事を
ピックアップしてまとめておきたいと思います。
この獣医さんは腎臓病の専門家ではありますが
あくまでひとりの獣医さんだという事を
念頭に読んで頂けたらと、思います。
どんなに専門家であっても絶対と言うのは存在しませんから。




 慢性腎疾患(CKD)で起こる貧血は

  (1)機能を営むネフロンの減少による腎臓における造血ホルモンの
    エリスロポイエチン(EPO)の相対的あるいは絶対的な産生低下
  (2)食欲不振などによる鉄の欠乏
  (3)消化管からの出血など

が主な原因で、その大部分は(1)と(2)だそうです。
慢性腎疾患(CKD)の末期でよく認められる食欲不振は
昔は尿毒症によるものだと断定されていましたが
今では貧血が大きな原因であることが判っているそうです。
その事からも、抗体を怖がるのではなく早めにエリスロポエチンの
投与を開始した方が良いのではないか、とわたしには思えました。

また一般的なエリスロポエチン(EPO)に対する推奨時期は
犬でも猫でもPCV(Hct)が20%を下回ったところから始めるそうです。
その理由は、投与された動物の30%にヒト用に作られた
エリスロポエチン(EPO)に対し抗体ができるからだそうです。

しかし、A獣医師の意見では70%の動物では抗体が産生されず
もし抗体が産生されても投与を止めれば、抗体が消失することから
腎性の貧血に対しては積極的にEPO療法をおこなうべきだと考えられているそうです。
それに加えて大事なことはエリスロポエチン(EPO)療法と共に
鉄剤(硫酸第一鉄)を必ず投与することだそうです。

またエリスロポエチン(EPO)投与量は100単位/kg、週3回、皮下注で開始し、
エリスロポエチン(EPO)の投与効果を妨げる要因(感染、炎症、腫瘍など)がなければ
開始時PCVの1%ずつ毎日増加していくはず、だとのこと。
私から見ると毎日1%ずつ必ずってことはないと思えますが^^;

またもし、脱水を輸液療法により是正した後でPCVが急に10%台に低下したら、
まず輸血でPCVを35%程度まで上昇させて、その後エリスロポエチン(EPO)療法を
開始すると良いそうです。

私からの(1)の貧血に対して
  「相対的な低下か、絶対的な低下なのかを調べるには
  網状赤血球数の検査はをすればわかるのでしょうか?」
と質問したところ

相対的というのはエリスロポエチン(EPO)の産生は
貧血(腎臓を流れている血液の酸素張度の低下)に応じて適切に行われているが
失血あるいは尿毒症物質による赤血球破壊の程度が多くて
全体的にエリスロポエチン(EPO)が不足しているように見えることで
相対的および絶対的な不足を区別する意味はありません。
網状赤血球の産生は両者とも抑制されています。

との回答を頂きました。
加えて
  「また一度できた抗体でも投与を止めれば消失するというのは
  臨床でわかっているのですか?」
との質問には

エリスロポエチン(EPO)に対する抗体は投与された動物の30%程度しか
出現しないことから考えて、これは連続的に接種された抗原に対して産生される
抗体と考えられ実際にも投与を中止すると抗原量は低下します。
骨髄の顆粒球/赤芽球比を調べると抗体の産生状態が判りますが
臨床では上昇していたPCVがエリスロポエチン(EPO)を連続投与しているのにも
かかわらず低下し始めたら、中止すればよいと思います。
これはCowgill LDが抗体価を測定して証明済みの事実です。

と回答を頂きました。
とは言えPCV上昇し続けてしまい、基準値を超えた場合も、中止した方が
良いのではないかな、と思いました。たぶん実際にそういう状況に巡り合った場合は
中止するのかな、とも推測ですが思いました。

以上のことから、やはり早め早めに対応して行くことが
一番なのでは?と感じました。
慢性腎不全が治るものなのであれば、話は別かも知れませんが
アンケートの記事にも書いたように、腎性貧血が起きた時点でかなり腎臓は
機能しなくなっているわけですから、楽にしてあげると言う意味で必要かな、と。

最後に。
貧血とは離れますが、慢性腎不全に対しての注意として教えていただいた事です。

薬物(栄養物も含め)のほとんどは肝臓や腎臓で分解されて腎臓から排泄されるので
できれば腎機能の低下した患者には投与する薬の種類を少なくすべきです。
一般には最も安全だと思われている抗生物質のアンピシリン(合成ペニシリン)や
セファレキシンでも投与する患者によっては多尿性急性腎不全を起こします。

との事でした。投与しなければならない場合でも、獣医さんが投与する場合は
主に腎代謝される薬などは避けていると思いますが、時折、それでいいの?
って薬を処方されている方も見かけます。
なので、私たちがしっかりと見極め、不審な点はすぐに獣医さんに相談するべきだと
思います。
by Ganbaruneko | 2007-02-20 20:59 |  ├慢性腎不全
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